仲介手数料無料をどうして実現できるの? 利用しても問題ない?

最近時々見かけるようになった、不動産の「仲介手数料無料」。怪しくないかな? と、少し気になります。結論から言うと、売買の仲介手数料のうち、買い手の手数料を無料とするパターンは利用しても問題ない場合が多いです。また、賃貸で入居者の仲介手数料が半額とか無料というのも、利用しても問題ないと思います。
売買で、売主の仲介手数料を無料にします、というパターンは、私だったら避けておきます。
というわけで、今回は、仲介手数料無料の背景を解説していきます。
結論は冒頭で紹介しましたが、そこであげた3つのパターンについて、それぞれ背景を考えてみましょう。
まず最初は、売買で物件を購入する場合の「仲介手数料無料」。
新築の建売分譲で「仲介手数料無料」とうたっているケースが多いのですが、仲介業者が手数料を無料にできる理由は、売主である新築分譲業者が仲介手数料を払っているからです。
新築の建売分譲業者は、一般的に、完成した物件の資料をたくさんの仲介業者に送っています。仲介業者はそれをathomeやSUUMOなどのポータルサイトや自社のホームページに掲載し、しのぎを削って販売しています。
つまり、同じ物件を販売する業者がたくさんいる状況です。そこで、仲介手数料については分譲業者からもらえば十分と考えて、買い手は「仲介手数料無料」とすることで、自社で成約してもらおうとするわけです。本来なら買い手から仲介手数料をもらいたいところですが、あえてそれをしないのは、ライバルが多い環境下で、自社で成約してもらいたいからです。
そういうことなので、こういったケースの仲介手数料無料は、ありがたくお受けしておいて問題ありません。

もうひとつ、賃貸物件入居時の仲介手数料無料。
これにも背景があります。
なかなか入居者が決まらない賃貸アパートなどで、大家さんが「ADを出します」ということがあります。これは仲介手数料とは別立ての「広告料」名目のお金です。
ADを出すから優先的に客付けしてほしい、という大家さんの戦略ということができます。
ADが家賃の何ヶ月分出るのかはケースバイケースですが、仲介業者や賃貸管理業者はこのお金によって収入が発生するので、そのぶん入居者からの仲介手数料を安くします。安くすることで、入居してもらいやすくなるわけです。
その結果、仲介業者であればADのお金を早くもらうことができますし、賃貸管理業者であれば、家賃収入からもらえる賃貸管理料が、より早く入ってくるようになります。
このケースでは、その物件が入居したいと思える条件をクリアしているなら、仲介手数料無料の物件で決めてよいと思います。条件さえあうなら、お得な物件だといえます。
最後に、ちょっとひっかかるのが、売買の売主仲介手数料が無料というケース。これには仲介手数料半額などのバリエーションもありますが、いずれにせよ、背景を知ると複雑な気分になります。
ここまで見てきた2つの例では、仲介手数料を無料にする代わりに、別の収入源がありました。しかし、売主の仲介手数料無料というケースでは、それがありません。
ではなぜ、あえて仲介手数料を無料にするのか、が問題です。
売買中心の不動産業者にとって、生命線ともいえる売却物件の募集。
これがうまくいっている業者なら、わざわざ仲介手数料を無料や半額にする理由はありません。不動産仲介業者の売上げのほとんどは仲介手数料ですから、そこを減額するというのには大きな理由があります。
実は、こういう業者は、仲介手数料を減額しないと、売主を探せないということです。
そして、仲介手数料無料で売主を見つけている以上、必ず買主から仲介手数料をもらわないとビジネスとして成り立ちません。このいびつな取引の形態には2つの問題があります。
ひとつめは、本来幅広い不動産業者に情報を流して買い手を探さないといけないのですが、それができないこと。先ほど述べたように、必ず買主から仲介手数料をもらう必要がありますから、必ず自社で客付けしないと収益がゼロになってしまいます。これによって、物件が売れにくくなるということが言えます。
もうひとつは、買主からはお金をもらい、売主からはお金をもらわないということで、実は買主だけがお金を落とすお客様だということ。売主は仲介手数料を無料にしたために、お客様と言い切れない、微妙な立場になってしまいます。
不動産屋は、お金を払う人と、お金を払わない人の両方を目の前にして、価格交渉や条件面の交渉において、そのふたりの利害を調整する仕事をします。
これはお金を払う人が有利になりそうです。
30万円の仲介手数料を節約したために、取引では100万円損をした……といったことも考えられますから、売主の仲介手数料無料、というパターンについては、十分考えた上で、利用するかしないかを判断してください。